献体(けんたい)とは、遺体を医学研究などに提供をすることを指します。今後の医学の発展などに、献体として貢献してくれる人がいるということです。生前に献体を管理している団体に登録をしなければ、献体として提供されることはありません。

このページの目次はこちら
献体は医学を発展させるために必要
献体とは、遺体を解剖教室などの医学研究の場に提供して、医学が発展することに貢献するという意味です。そして、自ら死後に献体として役立ててほしいという人が、献体の登録をする必要があります。そして現在では、献体を選ぶ人が増えているという傾向があります。
献体とは?いつから始まった?
日本では1983年に献体法という法律が制定され、献体の定義が決められました。献体制度が必要になった背景には、医学教育が危機的状況に陥っていたという理由があります。
医学教育にて大切なのは、解剖学の実習であり基礎にもなる学習です。しかし、提供される遺体がとても少なく、昭和30~40年代には危機に陥っていると言われる状況でした。基本的に医科大学では学生2人に対して遺体の提供が1体となっていたのですが、この基準が満たせない大学がほとんどだったのです。
このように医学の進歩が危機に陥った状況を見てきた人たちが、役に立てるならということで献体を申し出たことが、献体運動のスタートとなりました。
献体を選ぶ人が増えている理由とは
昔は、献体を選ぶ人が少ない傾向にあったので、実習や研修などに必要な遺体がなかなか集まらなくて大変だったということもありました。しかし、現在では献体を選ぶ人が増えてきていることが分かっています。
その理由は、自分が亡くなった後に何かしらの役に立ちたいと思う人が増えたからです。中でも、日本は高齢化社会になってきており、身寄りがない高齢者や残された人に迷惑をかけたくないと考える高齢者が多いのも1つの理由です。
献体に登録する方法
献体は勝手に申し出ることができるわけではなく、きちんと手続きを踏む必要がありますので、その手順をご説明します。
step
1申込書をもらう
献体の申し込みは、まず「献体篤志家(けんたいとくしか)」という団体か、医科歯科大学に行います。また、自分が住んでいる都道府県の団体や大学などに問い合わせをすれば、申込書をもらうことができます。
step
2申込書に記入する
申込書をもらったら、必要記入事項を埋めていきます。捺印や肉親の同意の印も必要になります。記入がすべて終わったら、郵送で送ります。
step
3会員証をもらう
申込書が受理されると「会員証」が発行され、手元に届きます。この会員証が献体登録の証なので、いつも持ち歩くようにするといいでしょう。登録先団体、死亡時の連絡方法など大切なことが書かれているので、会員証はなくさないように注意しましょう。
このような流れで割と簡単に献体登録を行うことができます。ただ、献体というのは自分だけで決めるのではなく、しっかり家族と話し合いをして同意を得なければなりません。周りの人の意見も聞きながら、献体登録を考えましょう。
献体をしたら葬儀はどうなるのか?
献体をすると、葬儀の前か葬儀の後のどちらかに実施されることになります。それぞれの流れをご紹介しましょう。
◆葬儀前に献体を提供する
葬儀前に献体を提供すると、葬儀を行うときに遺体がないという状況になります。遺体解剖が終わり、遺骨が返ってきてから改めて葬儀をすることも可能ですが、遺骨返還までには1~2年程度かかります。
このときの搬送費用、火葬費用などは各団体の負担となります。
◆葬儀後に献体を提供する
通夜と葬儀などを一通り済ませた後に、献体を提供することも可能です。普通であれば、葬儀が終わったら火葬場に向かい火葬されますが、献体は葬儀が終わったらそのまま登録先の各団体に搬送されます。
搬送費用、火葬費用などは各団体が負担しますが、通夜や葬儀などの費用は一般的なものと同じく遺族の負担となります。
葬儀を行うべきか?行わなくてもいいのか?
献体として提供をする場合、葬儀の前・後のどちらかを選ぶことができます。ただ、葬儀の前ということになると、実質葬儀をしないということになります。
では、葬儀を行うべきか?行わなくてもいいのか?どちらが良いのか迷ってしまう人もいるでしょう。
この選択に関しては、各々の考え方がありますのでどちらが良いとは言えません。ただ、葬儀を行わないのであれば、遺族に葬儀費用を負担させなくて済みますので、金銭的な面で残された人のことを考えてメリットがあると思う人もいます。
また、葬儀を行わないと遺族が故人に対してけじめをつけることができないというデメリットもあります。ですから、献体提供をする場合には葬儀をどうするのか家族と話し合いをしておく必要があります。
献体は慎重に考えて決めましょう
献体により医学の発展に貢献することができます。一方で、献体により家族が悲しむ可能性もあります。献体は役に立ちたいという気持ちを実現させるものでもありますが、残された人の気持ちなども考えて、しっかり説明をすることが大切です。