死化粧(しにげしょう)という言葉を聞いたことがあるかと思います。死という文字が入っていることからも分かるのですが、亡くなった人に対する化粧という意味が込められた言葉です。

具体的に死化粧では、どのようなことを行うのか、そして死化粧を行う専門家の存在などについてご説明したいと思います。
このページの目次はこちら
死化粧を行う目的とやり方
なぜ亡くなった人に対して化粧をするのか、という疑問を抱く人もいるでしょう。確かに亡くなっているのに化粧というのは、どこかミスマッチのような気がするかもしれません。ただ、死化粧というのは一般的な女性が施すようなメイクではなく、亡くなった人のための化粧です。では、どうして死化粧をするのかご説明します。
死化粧をする目的とは?
死化粧は、亡くなった人に対して人生で最後となる葬儀という晴れ舞台で、綺麗なお顔になってもらうために施すものです。顔だけではなく、体も化粧道具を使いながら綺麗にしていきます。
人間は死んでしまうと体が硬直して、顔色なども生きている人とは異なり、質感も変わっていきます。また、身体に損傷を負ってしまった遺体などは、死化粧をしてキズなどを分かりにくくして、遺体の状態を綺麗に保てるようにします。
このように、死化粧は亡くなった人に対する敬意でもあり、葬儀で最後に綺麗な顔で晴れ舞台に挑んでほしいという気持ちを表現したものになります。
死化粧のやり方について
死化粧は亡くなった人が納棺されるまでの期間に行うものです。現代では病院で亡くなる人がほとんどなので、看護師が亡くなった人の死後処置を行うケースもあります。そこで、今回は看護師が病院で行う死化粧の流れをご紹介します。
1、医療器具を片付ける
病院で様々な医療器具がついたまま亡くなった人には、看護師が器具を抜いて片付けるところからはじまります。看護師以外にも医師が器具を抜くこともあります。
2、体内の内容物などを出す
亡くなった人の体には、胃の中に内容物が残っていることや、尿などが残っていることがあります。そういったものを体から出すために、胃や腸などを圧迫します。その際に、口の中や鼻の中の吸引などもして、綺麗にしていきます。
3、口の中をケアする
口の中に臭気がでてこないように、口の中のケアをします。ガーゼや消毒アルコールなどを使いながら、あごが硬くなる前にケアを施します。
4、体を拭き取る
体をきれいに拭きとってあげる行為を清拭と呼びます。
以前は遺体から体液が出てくるのを防ぐ目的で、綿を校門や鼻に詰めるという慣わしがあったのですが、体液が出るという根拠がなく最近では綿づめは行わないケースもあります。
5、着替え
遺体の服を着替えさせるのですが、遺族が持ってきた服を着せるときもあれば、病院で用意をしておいた浴衣を着せるときもあります。
6、化粧
ここまで看護師などが準備をしたら、最後は化粧をして整えていきます。
髪の毛は汚れている場合には、水を使わないシャンプーを行って、とかしてあげます。顔は乳液やクレンジングを使って綺麗にして、男性であればひげを剃って整えていきます。
化粧をするときは、女性の場合はこれまで通りの化粧をするのですが、顔色などを考慮しながら化粧の色合いを考えていきます。また、着替えさせた洋服に合わせた化粧をしたり、故人の好みの化粧をすることもあります。
化粧が終わったら、最後に遺体の手を合掌の状態にして白い布を顔にかけてシーツを体にかぶせます。
死化粧を仕事にしている人たち
死化粧を看護師がするケースもありますが、最近では「エンバーマー」という資格を持っている専門的な人が、死化粧や遺体の保存処理などを行うことが増えています。エンバーマーは、一般社団法人日本遺体衛生保全協会が指定した施設で研修などを行って、資格を取得することができます。
死化粧をするときに、誰がやっても問題はなく資格などは必要ありません。ですから看護師ではなく、個人的に遺族がやっても大丈夫ですし、故人と関係の深かった友人などがやることも可能です。
ただ現在では、葬儀社や病院のスタッフ・看護師などが行うことが多いので、あまり一般人がやることはありません。
死化粧で使う化粧道具
死化粧は一般的な化粧と同じ感覚で行なえるのですが、保湿力があり肌が明るく見える色合いのファンデーションを使うと、遺体を綺麗に見せることができます。
また、故人が気に入って使っていた化粧道具を使って化粧を行うケースもあります。死化粧は、故人の雰囲気を損なわないようにするのが理想的なので、元気なころの故人の写真などを見ながら化粧をしてもらうのもいいでしょう。
死化粧で最後の舞台を美しい姿で!
死化粧は最後の晴れ舞台である葬儀にて、故人が美しく整った姿で居られるようにするためのものです。遺族が故人に化粧をしてあげたいと思うならば、もちろん自分たちで化粧をしてあげてもいいでしょう。
