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枕飯にはお米と団子がある
枕飯とはどのようなものなのか、そしてどうやって作るのかを詳しくご説明します。
お米で作る枕飯
枕飯は故人の枕元に飾るもので、いわゆる「枕飾り」の一種になります。
元は「一膳飯」と呼ばれていて、お嫁に行く人や引っ越しをする人などが、「旅立ちこの場所に戻ってこない」というシーンで出されるものでした。
その意味が亡くなった人に使われるようになり、葬式で枕飯という形に転じていったのです。
小さいときに、ご飯にお箸を指したら「縁起が悪い」「行儀が悪い」と言われたことがあるかと思いますが、それは枕飯からきています。
では、枕飯の作り方をご説明しましょう。
1、お米1合を炊く
お茶碗に摺り切りいっぱいのお米を炊くのが昔からの風習でしたが、現在では1合を炊いて使うようになりました。また、普通に何合か炊いたお米を使っても問題がなく、そのときには「最初の一杯」を枕飯として使います。
2、すべてのお米をお茶碗に盛る
1合分、または最初の一杯をお茶碗に高く盛ります。お米の高さは、高いほどに良いという風習があります。ですから、真ん中の方に高さをうまく出しながら、綺麗な半球状になるように盛りましょう。
3、枕飯に箸を一膳立てる
お米の真ん中に一膳の箸を刺して立てます。宗教や住んでいる場所などによって、細かいルールが異なりますが、無宗教であれば普通に箸を立てることができれば問題ありません。
中には箸を「十字」にすることや、一膳ではなく「一本だけ」を立てるところもあります。
団子で作る枕飯
枕飯にはお米だけではなく「団子」もあります。これを「枕団子」と呼びます。
枕飯と同じく故人の枕元に飾るもので、「うるち米の米粉」で団子を作ります。
枕団子を供える理由は「冥土の旅に出るとき、お腹がすいたら食べられるように」という願いが込められているからです。
また、旅に出たときに途中で空腹で困っている人に、団子を分けてあげることにより「徳を積む」ことができると考えられています。
基本的に枕団子も枕飯と同じように、「高く盛る」のがポイントです。一般的には「6個」の枕団子を飾るのですが、中には13個だったり、49個だったりする場所や風習もあります。
枕飯はどのくらいの期間作ればいいのか?
枕飯は故人が亡くなった日から作って飾るのが一般的です。
ただ、地域などによって「通夜の日」に枕飯を作り始めるという場所もあります。
基本的に火葬をする日まで、毎日枕飯を作って取り換えるという作業をします。前日から当日まで供えてあった枕飯・枕団子は「半紙」などに包んで棺の中に入れます。
また、積み重ねていた枕団子が崩れてしまったら、新しい枕団子を用意して交換をします。崩れたものは「半紙」などに包んで棺の中に入れます。
枕飯に使ったお茶碗はどうすればいい?
枕飯を供えるときに使ったお茶碗は、「割る」という処理をします。お茶碗を割ることによって、死者の魂に対して「決別」という気持ちを悟らせるという目的があります。
枕飯や枕団子を作らない宗教もある
仏教の全ての宗派で枕飯や枕団子を供えるわけではありませんが、多くの場合は枕飯を供えるという風習があります。
また、キリスト教では枕飯という風習はありません。
浄土真宗の考えは「死んだらすぐに仏になる」というものなので、冥土の旅に出るという考えはなく、そのための飯や団子は不要となっています。
枕飯も含まれる「枕飾り」とは?
枕飾りの一種が枕飯や枕団子なのですが、枕飾りはどのような意味を持つものなのかをご説明します。
枕飾りは、亡くなった人に対して成仏してもらいたいという目的があり、行うものです。
亡くなった人の魂というのは、まだ人間として欲を捨てることができない状態で、この世に未練を残しているものだと考えられています。
そんな状態の亡くなった人に、枕飾りを行って「この世への執着心」を浄化させて、成仏を促すのです。
「仏式」では、焼香や礼拝ができるように白木の台や白い布をかけた小ぶりの机などを準備しておきます。元から仏壇がある家庭であれば、仏具なども持っている可能性がありますので、弔問客に対応できる備品などが揃っている場合には改めて購入しなくても大丈夫です。
また、枕飾りは葬儀社が用意してくれることもありますので、葬儀社のスタッフに枕飾りや枕飯について相談をしておくといいでしょう。
【仏式のお供え】
・香炉: 線香を1本立てておきます
・燭台
・白いロウソク
・花瓶
・樒
・枕団子
・枕飯
・水
・鈴とりん棒
【お供えの置き方】
台の奥に花瓶、枕飯、水、ろうそくを左から右に並べ、手前は線香、香炉、鈴の順に設置します。
キリスト教では枕飯の風習はありませんが、広い意味で捉えれば枕飾りと呼べるものがあります。
それは、故人の枕元に置かれる十字架とロウソクで、仏式に比べると飾るものの種類も数も少ないと言えるでしょう。
【キリスト教式のお供え】
・燭台
・白いロウソク
・百合などの白い花
・十字架
・聖書
・パン
【お供えの置き方】
飾りを置く台の奥に燭台、その右に花、手前に十字架、聖書、パンの順に並べます。
また、神道の場合は枕元に小さな机が設置され、その上に洗ったお米、塩、水、故人の好物などを乗せますが、使うのは素焼きの皿、その皿を三宝に入れてお供えするしきたりです。
今は行われていませんが、昔は故人を安置している部屋にしめ縄を張るという風習もあったようです。
【神式のお供え】
・御霊代
・三方
・お神酒
・榊
・燭台
【お供えの置き方】
八足机の中央奥に御霊代、両端に榊を置き、手前の中央に三方、両端に燭台を置きます。
枕飯や枕団子の風習を忘れないように!
葬儀などは人生の中で、たくさん起こるものではありません。ですから、枕飯や枕団子に関しても、頻繁に作ったりするものではありません。ただ、亡くなった人のために最善を尽くしてやるのが、残されたものの使命です。
枕飯や枕団子を含む枕飾りは、亡くなった人に早く成仏してほしいという思いを込めてお供えするもので、早く楽になってもらいたいと願うのは遺族なら当然のことでしょう。
宗派や宗教によって故人の枕元に飾るものやそれぞれの意味合いは異なりますが、安らかに眠って欲しい、最後にできることは全てしてあげたいと思うのはどんな宗教を信仰している人でも同じではないでしょうか。
葬儀が簡略化され、昔ながらの葬儀の風習や手順が忘れられてしまうのは時代だから仕方がないという面もありますが、どんな時代でも大切な人の最後のお見送りは間違いのない手順でしてあげたいと思うはずです。
ほとんどの場合、葬儀社が全てを準備してくれるので、枕飾りの意味を知らなかったとしても供養をすることはできますが、できることは全部やってあげられたと思えるように、一つずつの飾りの意味を知り、故人の旅立ちを見送ってあげてください。
