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枕直しとは?なぜ北枕にするのか?
枕直しとは、棺に遺体を入れる前に北の方角に頭を向け、南の方角に足を向けるようにして遺体を寝かせることです。そして枕飾りなどを施して、遺体を安置します。
遺体は死化粧を施され、白装束を着用させるのが一般的です。ただ、最近では故人が好んで着ていた洋服などを白装束の代わりにするケースもあります。
枕直しで北枕にする意味とは?
枕直しというのは、仏式と神式のどちらでも行う儀式ではありますが、一般的に神式の儀式といわれていました。
なぜ北枕にするという儀式が行われるようになったのか、それは「仏教」がルーツになっていると考えられています。
お釈迦様が入滅した際に「頭北面西(づくほくめんさい)」という、頭を北にして顔を西にするという状態にしていたからという説が、かなり有力です。
ただ、仏教が日本に入ってくるずっと前から「北枕」にて埋葬をするという風習がありました。その時代は、なんと縄文時代からだということが分かっています。
日本では「北に祖霊がいる」という考えのもと、遺体に対する儀式を行ってきました。
子孫を守ってくれる祖霊は「守護霊」になるのですが、次第に祖霊が「死」の儀式やイメージに関連していくようになり、あまり良いイメージではなくなってきました。
その証拠に、「北枕は縁起が悪い」なんて言葉を聞いたことがある人は、たくさんいるでしょう。
両親や祖父母が「北枕で寝ないように」と方角をしっかりと確認してから、布団をしいていたこともあるでしょう。
最初は死や悪いイメージではなかった北枕も、時代とともに死の悪いイメージが定着してきてしまい、あまり良い言葉として使われることはなくなりました。
ただ、縄文時代から行われていた北枕という風習がずっと日本に残っていたことが、仏教の「頭北面西」に関連するようになり、仏教がルーツになっていると考えるようになりました。
そうなると、仏式と神式のどちらのものなのかという疑問を抱く人もいるでしょう。実は神式だけではなく、仏式でも北枕を行うという習慣がすでにできています。
北という文字は縁起が悪い?
北枕という言葉が忌み嫌われるのには、死のイメージだけではなく他にもまだあります。
北という漢字の歴史を紐解くと、「人間2人が背中を向けて反目する姿」を表していることが分かります。
例えば「敗北」という言葉にも北という漢字が入っていますが、これは負けたから逃げ出すという意味があります。
つまり、北は「後ろ姿を見せながら逃げる」という意味が含まれています。
その他にも、人体を表している「月」という文字に「北」を加えると「背」という文字になります。これもやはり、後ろ姿という意味が北に含まれていることからできたものです。
枕直しの詳しいやり方
枕直しを行うときの、正しいやり方について簡単にご説明します。
神式の場合、仏式の葬式にあたる「神葬祭」が行われます。神葬祭で枕直しをするときと、仏式の枕直しは、ほぼ同じ内容になります。
まず、遺体の頭を北に向け「北首仰臥(ほくしゅぎょうが)」という状態、つまり北枕にして寝かせます。
その後、「枕飾り」により、遺体の枕元を葬具や供え物などで飾っていきます。具体的には、枕の近くに「枕屏風」という風よけの屏風を置きます。
また、遺体の横か直接手に持たせる形で「守り刀」という方名を置きます。刀の置き方は地方により異なりますが、切っ先が遺体に向かないようにします。
「常餞(じょうせん)」と呼ばれる、いつも故人が食べていたものや「燈火」を枕飾りとして飾ります。その他にも、「酒・米・水・塩・榊」などの一般的な供え物を置いても問題ありません。
ちなみに、遺体を寝かせる場所のスペースの問題で北枕にできないという場合には、「西枕」にするケースもあります。
枕直しの儀式が終わったら納棺をする
枕直しをした後は、通夜祭をして納棺の儀となります。
仏式でいえば、葬儀・告別式が終わってから納棺の儀に移ります。
枕直しをしてから、納棺までの日数というのは、厳密に決まっているものではありません。
ただ、あまり日にちを置かず「翌日」に納棺することが多いです。
枕直しの儀式は葬儀において欠かせないもの
枕直しは亡くなった人が出たときに、ほとんどの家庭で行うものとなります。宗教によっては、枕直しがないケースも存在しますが、仏式と神式であればほぼ行われる儀式なので、覚えておくといいでしょう。
